3、自己責任  (2003/2/1)

最近の日本の経済状況をみていると将来の国民生活に不安を与える材料が山積みになっている。 政府、各企業の先行き不透明感が払拭できない状況下では国民一人一人の自己責任で、自分の将来の不確定要素を排除していくしか方法は残されていないように感じる。

先行きの見えないデフレ傾向だが、2003年1月31日に総務省が発表した消費者物価指数が2001年に比べ、0.9%下落し、戦後初の3年連続減少し、デフレ傾向に歯止めがかかっていないことが確認された。

政府はこれを受けて、4月から公的年金の給付額を0.9%減額することを決定。 厚生年金では、モデル世帯(夫が40年加入、妻は専業主婦)の場合、月額23万8125円から23万5992円に下がり、2133円の減額。 国民年金では、夫婦2人で月額13万4034円から13万2834円に引き下げ、1200円減る。 公務員らの共済年金や障害者らを対象とした10種類の福祉手当なども、0・9%減額されることになる。

また、厚生労働省は31日、サラリーマンが加入する厚生年金で、2001年度に徴収不能となった保険料は過去最悪の486億円に上昇したことを明らかにした。 これは、倒産や事業不振により、年金保険料を支払えなくなった企業が増えていることが要因と見られている。

厚生年金の保険料は、月収の17・35%(今年4月からは年収の13・58%)に相当する額を、企業と従業員が半分ずつ負担する。 すべての法人事業所と従業員5人以上の個人事業所は、厚生年金への加入が義務付けられている。  厚労省によると、2001年度に徴収する予定だった保険料約20兆1500億円のうち、実際に納付されたのは約19兆9360億円にとどまり、約2150億円が未納となった。 2年間の納付義務期間を過ぎても支払われず、徴収が困難となっている保険料額は、2001年度は486億円となった。

失業率に目をやると、総務省が31日午前に発表した労働力調査(速報)によると、昨年2002年の平均完全失業率は5・4%で前年比0・4ポイント悪化して、2年連続で過去最悪を更新。 また、2002年12月の完全失業率(季節調整値)は5・5%となり、前月より0・2ポイント悪化し、昨年10月などと並んで過去最悪となった。

昨年1年間では、正社員の数が前年比73万人減となり、特に、従業員数500人以上の大企業で64万人減と大きく減った。 業種別では、製造業、卸売・小売業、飲食店での落ち込みが激しかった。 失業率を男女別に見ると、男5・5%、女5・1%だった。

また、昨年12月の完全失業率は、男性が5・6%と前月と同じだったが、女性は0・4ポイント悪化して5・3%となり、昨年5月と並んで過去最悪。 完全失業者数は331万人で、前年同月と比べて6万人減となった。

このような状況の中、株式市場では、デフレ克服の道筋を見い出せない日本経済の先行き警戒感が強まり、イラク情勢も嫌気されて、株安が加速する展開になっている。 また、12月の完全失業率が過去最悪に並び、雇用・所得環境に改善の兆候が見えないことも売り材料になっている。

31日の東京株式市場をみると、前日のニューヨーク株式市場の大幅反落を背景にした売り注文が先行し、日経平均株価(225種)は一時、前日終値比79円78銭安い8237円03銭に下落し、昨年11月14日につけたバブル後の終値の最安値(8303円39銭)を下回った。 

30日の東京債券市場では、長期金利の代表的な指標である新発10年物国債の流通利回りが一時、前日終値比0・020%低い0・755%まで低下(債券価格は上昇)し、2日連続で過去最低を更新した。

イラク情勢の緊迫化で、市場では投資家が安全資産に資金を振り向ける動きを強め、「株安・債券高」の流れが加速している。 また、デフレが長期化し、金利の先安感が強まっているのも、長期国債の買い材料となっている。

このようなデフレ傾向、公的年金の給付額減少、失業率悪化、日経平均株価の下落が続く状況下の中、追い討ちをかけるように、我々一人一人に直接的に影響してくる生命保険会社の予定利率引き下げが自民党保険問題小委員会で検討されている。

今後、日本経済が発展していく明るい材料が見出せない今、まずは個人で年金問題、雇用状況の悪化に備え、経済的自己防衛を一刻も始める必要があるように感じる。 将来的に公的年金の受給年齢が引き下げられる、あるいは、給付が受けられない可能性さえあるとさえいわれる。 現在、そして将来的にも精神的、物質的に豊かな生活を送る為にはライフプランの練り直しから始める必要性を感じる。 自分では、国から支給される公的年金などの社会保障も企業から支給される退職金なども当てにならないものとして考え、自己投資、金融投資のプランを立てている。

年金にかわるものとして、為替リスクを考慮に入れた上で、10年〜20年後に償還されるアメリカの国債(ゼロクーポン債)や日本の銀行で超低金利で眠っている預貯金に関しては運用利回りアップと将来の円安を見込んで、外貨建てMMFに換えたり、と個人の資産状況やリスクのとり方に応じて投資先も投資期間も変わってくるだろう。 基本的に銀行、郵便局の預貯金はお金を貯める為のものであって、資産を増やす為のものではないから、資産を増やそうと思えばある程度のリスクをとって株式投資も必要になってくるだろう。

個人的には、将来の日本経済の成長率、世界標準からみた円の通貨価値を考えると金融資産の30〜50%は外貨でもっておいたほうが、超円安時代到来の際のリスク回避になるだろうと考えている。

確かに円は、現在のところ世界三大通貨ではあるが、ドルやユーロとは異なり決済機能がなく、日本の経済力を背景とした通貨価値しかないのにもかかわらず、米ドル並みの通貨だと多くの人が思っている。 現在のような経済状況では、今後ますます円の価値は弱くなっていくことが予測されるし、現状のデフレ傾向解消には政府も円安を進めていく必要がある。

将来的には中国の元が円の代りをするときがくるかもしれない。 もしそうなった場合、通貨価値が大きく変動し、円建て資産も乱高下する。 本当の資産価値は世界標準から見た価値であり、日本円だけで、資産をもつということは円安になると世界標準からみて、資産価値は大きく目減りする。 その意味でも有事の金、米ドル、ユーロといった真の基軸通貨をポートフォリオに入れておいたほうが得策といえるだろう。


現在のところ、多くの国民が当てにしていると思われる年金制度。 会社員であれば、厚生年金、自営業者であれば国民年金、公務員であれば共済年金。 しかし、この制度の現状はといえば、年金受給年齢は、どんどん引き上げられるし、少子化の問題で若い世代の年金原資となる保険料が減少しており若い世代には非常に不利な制度となっている。

仮に今、会社員の年金受給開始が70歳に引き上げられた場合、60歳で定年退職を迎えた人は10年間無収入で暮らすことになる。 夫婦二人で年間の最低限の生活費を400万と仮定した場合、4000万円のお金はどうやって捻出するのか。 企業収益の悪化に伴い退職金制度が少しづつなくなりつつある現在、そして退職金さえ当てに出来ない中小企業で働く会社員は老後どうやって暮らしていけばよいのか。 人によっては、企業が退職年齢をもっと遅らせるというが、はたして、実現するだろうか。 若い世代に低賃金で働かせたいと考える企業側からすれば、逆に退職年齢はもっと短くなるのではないか。

いずれにせよ、右肩上がりの経済成長が続いた時代は過ぎ去ったのだから、若いうちから教育の現場や家庭において、今の経済状況に見合った資産運用教育をもっと真剣に行わなければいけない時代になっていることは確かだ。 今後は企業破綻の心配だけでなく、自分で自分の身を守らないと経済的に自己破綻するケースが多くなる時代に突入するかもしれない。

戦後のベビーブーマーが生きてきた日本の経済社会状況とは異なる時代をこれから生き抜いていかなければならない。 その為には、これまでとは違った価値観で物事を判断していかざるを得ない。 物質的にも精神的にもきつい時代かもしれない。 しかし、逆にこのような厳しい時代を生きていけることは、ある意味で自分自身を高められるチャンスが多いことに気が付く。 これまでのように、すべて国まかせ、会社まかせでなく、自分自身で情報を収集し、学習、実践するようになる。 つまり、自己責任が増えた分、自己の問題意識が高くなる。

自分が直面する年金問題にしても、公的年金制度の改革や個人レベルで年金に代わる資産の捻出法(投資法)に関しても、これまで以上に敏感になり積極的に対策を講じようとする。 仕事においても、収入を増やす為に実績アップに対する意識レベルが高くなるし、いつリストラにあっても食べていけるだけの自己のスキル向上、専門知識の掘り下げに真剣に取り組むようになる。 家計においては倹約することが習慣となり、無駄が排除されることになる。 虎の子の財産を増やす為には、賢明な判断で運用していく必要が生じ、投資の為に経済、社会の動き、市場動向、税法などの学習が必須となってくる。 これらの点を鑑みると、自分の人生に対して真摯に向き合い、知的にも精神的にも自己の持つ能力を伸ばしていくには、これまで以上に挑戦しがいのある、いい時代がきたと実感している。 覚悟を決めたときがスタート地点だ。